この二つは先の4大精霊力の関係性からは外れている。この二つは謂わば対極のようなものであり、互いが互いに影響を及ぼし続ける。
他の精霊力に対して影響が皆無、ということではないのだが、少なくとも先に述べた「相性」に類するほどの強い影響力は現在のところ確認されていない。
もっとも、どちらもまだ学院の研究過程にある属性ではあり、我々の知らない、知りえない影響が及ぼされている可能性は否めないのだが……。
話を光と闇に戻すことにしよう。
この二つの属性は、どちらが優位、ということはなく(精霊力が同等であれば)完全に均衡した力関係が成立する。
我々の感性からすれば、光のほうが闇よりも強いものと思い勝ちだが、それは誤り(もしくは光=善、闇=悪という概念に捉われた思い込み)である。
確かに、光の前では闇は存在し得ない。せいぜいが「影」としてその場にとどまるのが精一杯だ。光の前では、闇、というものは存在する術そのものを失わされてしまうのだ。
しかし、ひとたび光が消えれば、闇は瞬時にその場を支配する。光が「照らす」「輝く」といった能動的な場の支配を行わねばならないのに大して、闇は光が消えた瞬間に、自らは何もせずとも、ひどく自動的なまでにその場を支配することができる。
光と闇はそれぞれ、「動と静」(もしくは「能動的と受動的」)な性質を持っているといえるだろう。
光は自ら輝きを持って闇を例外なく打ち払う。闇は光のない場所には常に存在する。
それはどちらが強い、ということではなく、どちらかの前ではどちらかは一切に存在できない、という絶対の関係性である。
これは、程度の差違はあれどもある程度他の精霊力との共存が行える、4大属性には見られない性質といえる。